
「晴海西小学校・晴海西中学校ってどんな学校?」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
晴海西小学校・中学校は、グッドデザイン賞を受賞するほど優れた設計の学校です。新しく生まれた街「晴海フラッグ」に合わせて設計された新設校は、緑豊かで開放的なつくりが特徴のひとつです。
小学校と中学校で共用空間を一体的に整備し、風や光にあふれた居心地の良い空間を生み出しています。
本記事では、晴海西小学校・中学校の設計や工夫をご紹介します。晴海西小学校・中学校のデザインに興味がある方は、ぜひご覧ください。
目次
2024年4月に開校した晴海西小学校・中学校

晴海フラッグの誕生にともない新設されたのが「中央区立晴海西小学校・晴海西中学校」です。
1,000人の子どもが通うマンモス校
晴海西小学校・中学校は、2024年4月1日に開校し、小学校に約800人、中学校に約200人が在籍しています。
タワマンが建ち並ぶ晴海フラッグにおいて、地下1階・地上5階建ての校舎は低く、圧迫感が少ないのが魅力のひとつです。また、学校の周囲にはソメイヨシノが植えられており、春には花見ができます。
セキュリティに配慮しながらも学校の外周には塀を設けず、緑豊かで街に開かれたつくりをしています。校舎の設計は、石本建築事務所が担当しました。
教育理念は「5つのわ」
晴海西小学校・中学校が掲げる教育理念は、世界への可能性を引き出す「5つのわ」です。
- 羽:社会に貢献する気概をもち、世界で活躍する人
- 環:持続可能な社会に向け、考え行動する人
- 和:平和の実現に向け、多様性を受け入れる心豊かな人
- 話:コミュニケーションをとり、協働して解決する人
- 我:高い志をもち、おのれを磨き続ける人
社会に必要な知識やスキルを身につけるのはもちろん、個性や能力を伸ばして自分で未来を切り拓く力を育むための教育を目指しています。
2024年3月に実施された一般向けの内覧会には、約5,000人が来場したことから、高い関心がうかがえます。また、晴海地区の人口増加が予想されるため、晴海西小学校は第二校舎を建設する予定です。
新しい街をつなぐデザインは「グッドデザイン賞」を受賞

新しい街に合わせて設計された新設校は、グッドデザイン賞を受賞するほどデザインにこだわっているのが特徴です。
「グッドデザイン賞」は、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みで、60年以上にわたり親しまれています。審査には、使いやすさ・親切さなどのユーザーからの共感や、新たな文化の創出などの複数の観点があります。
晴海西小学校・中学校は、都市部の公立小・中学校では珍しいほどの緑を感じられるバルコニーや空間が審査委員から高評価でした。また、すでにある街路や街との連続性を意識した点も評価されています。
学校の随所に見られる設計の工夫

晴海西小学校・中学校は、デザインにこだわるだけでなく、教育機関として学校の随所にさまざまな工夫をこらしています。
「イエ」と「ニワ」でつくる居場所
晴海西小学校・中学校のデザインにおけるキーワードは「イエ」と「ニワ」です。
「イエ」(ハウス)と呼ぶ教室群や共有空間をL字型にずらしながら配置し、⾃然採光・通⾵を促進する「ニワ」(前庭や中庭)を⽣み出しています。イエとニワにより、風や光が心地よい適度な大きさの居場所の創出を実現しました。
また、⼩学校と中学校は同じ建物で、体育館やプール、図書室などの共⽤空間を⼀体的に整備しています。住宅をはじめ、公共施設やエネルギーインフラなどの日々の暮らしに必要な機能がまとまった晴海フラッグにふさわしい学校です。
ともにつくる街の環境
晴海フラッグと一体的に整備された学校は、緑豊かな街路やオープンスペースに囲まれて、街に開かれています。学校単体として存在するのではなく、晴海フラッグを構成する要素のひとつとして街に溶け込んでいるといえるでしょう。
学校の周囲に植えられたソメイヨシノが入学や卒業などの大切なイベントを華やかに飾り、交差点に面する広場では、気軽にコミュニケーションを楽しめます。今後、清掃⼯場の余熱を屋内プールの加温や空調に活⽤し、地域開放も予定しています。
地域とともにつくる緑豊かで親しみやすい街により、大人も子どもものびのびと暮らせるでしょう。
学校生活を鮮やかに彩る教室群
教室群を適切な規模にすることで、中庭や吹き抜けから風と光が入り、開けた学習・生活空間が実現しています。
軒の深いバルコニーと大きな窓が特徴の普通教室は、明るい学習空間をつくっています。図書室は、小学生が中学校の図書に触れたり、発表ができる大階段や自習のための個別学習スペースを設けたり、自発的な学びの空間です。
また、学年スペース・読書コーナー・教材スペースをセットで設置し、それぞれ広々とした空間・こぢんまりと落ち着く空間・先⽣の準備スペースを用意しています。使う目的は違えど、誰でもいつでも心地よく過ごせる居場所になっているでしょう。
さらに、街の様子が見える階段や自然光の入るベンチ、特別教室の様子が見える窓などが、学校生活を鮮やかに彩ります。
学習形態に合わせて使い分けられる教室
晴海西小学校・中学校の普通教室には、正面がありません。
これまでの普通教室では、背面にロッカーを設置するのが基本でした。しかし、晴海西小学校・中学校の普通教室は、ロッカーではなくホワイトボードを付けています。
カーテンで仕切ると教室の前後に設置されたホワイトボードを使えるため、グループ学習がしやすくなります。
また、教室と廊下の境目には柱がありません。教室を廊下まで拡張できるため、科目や学習形態に合わせて空間を自由に変化させられます。
学習内容に合わせて柔軟に環境を変えられるのは、学ぶ子どもはもちろん、教える先生にとっても好都合でしょう。
新設校を設計したのは石本建築事務所

※写真はイメージです。
高いデザイン性を誇る都心の新設マンモス校「晴海西小学校・中学校」の校舎の設計を担ったのは、石本建築事務所です。
石本建築事務所は、1927年に創立された歴史ある建築事務所で、教育施設だけでなくホテルや商業施設、物流施設などの設計を手がけています。教育施設では、小中学校のほかに、大学のキャンパスや図書室、イノベーションセンターなどを設計した実績があります。
晴海西小学校・中学校の設計にあたり活かされたのは「新しい街に最初にできた学校を街の一部にする」という考え方です。なにもかもが新しい街に誕生した新設校は、圧迫感が少なく街に開かれた学校づくりにより生まれました。
25人のデザイナーがデザインした晴海フラッグ
晴海西小学校・中学校が立地する晴海フラッグは、全体の調和を意識した街づくりをしています。25人のデザインのプロが集結し、個性と一貫性を両立した街を実現しました。
考案したのは25人のデザイナー
晴海フラッグのデザインにあたって意識されたのは、多様性を大切にしながらも調和のとれた街づくりです。個性と一貫性を両立するために、25人のデザイナーが集結しました。
街全体をデザインするマスターアーキテクトをはじめ、ランドスケープや各街区デザイナーなど、各チームに分かれて考案しました。ただし、チームに分かれて作業を進めるのではありません。
採用されたのは、ガイドラインをもとに各担当者がデザイン案を作成し、持ち寄るスタイルでした。晴海フラッグは、多様性と調和という相反する考え方を融合させるために、36回の議論を重ねて生まれた個性と一貫性を両立した街です。
イメージを共有するためのデザインガイドライン
晴海フラッグのデザインにあたっては、すべての関係者がゴールイメージを共有できるように「デザインガイドライン」が作成されました。国内外の建築や大規模な街開発の実績を持つ光井純氏を筆頭に、以下の内容を定めています。
- 建物の分節や壁面構成などのボリュームコントロール
- 街全体の色彩計画、素材感やディテールへの配慮
- 低層部のはり出しによる賑わいの創出、建物の圧迫感の低減
- 緑による魅力的な都市空間を創出するランドスケープ計画
多くの関係者が携わりながらも、個性と一貫性を両立した街を生み出した背景には、デザインガイドラインに基づく共通認識があったといえるでしょう。
優れたデザインで快適な学習環境を生み出す晴海西小学校・中学校
新しい街「晴海フラッグ」に開校した「晴海西小学校・晴海西中学校」は、グッドデザイン賞を受賞するほど優れたデザインです。
緑に囲まれ、風や光にあふれた学校は、心地よい空間であるだけでなく、快適な学習環境を整えています。教室の正面をなくすという画期的なアイデアでグループ学習をしやすくしたり、個別学習スペースの設置で自発的な学習を促したりと随所に工夫が見られます。
また、晴海西小学校・中学校は、街に開かれた学校で、高いデザイン性を誇る晴海フラッグの一部です。街に合わせて設計された学校として、地域を繋ぐ役割も期待されるでしょう。
執筆:ハルフラ編集部
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